「脱炭素経営」で
持続可能な社会づくりを。(2/3)
脱炭素の輪を大きく拡げ、仲間を増やしていくために
NR-Power Lab株式会社 社外取締役・リコージャパン株式会社 パブリック事業本部 GX事業部 副事業部長 出口 裕一
脱炭素のPDCAサイクルを“精度を高めて”回す
企業が脱炭素経営を実践していく難しさがあるとすれば、どのようなことですか?
出口:お声がけいただく企業様の多くが、脱炭素について「何から始めればいいのかわからない」という状態で、スタートが切れないという状況があります。そのため、先ほどお話ししたステップの最初の二つ、脱炭素経営に取り組む意義と目的への理解を深めること、お客様のCO₂排出量の現状を可視化するということは、私たちが特に重要視するステップです。
「なぜ脱炭素経営をする必要があるのか」を社内でしっかりと共有するためにセミナーを実施したり、脱炭素についてカードゲーム形式で学べるワークショップなども開催しています。また、「何から始めればいいのかわからない」企業様への新しいアプローチとして、脱炭素について「どのような取り組みをしているのか」「どこが難しいのか」といった情報交換を企業同士で行うコミュニティ「カーボンニュートラル倶楽部」を2025年末に設立しました。現在(2026年3月時点)、600社以上の企業様のご参加をいただき、御殿場の「リコー環境事業開発センター」の見学をはじめ、事例発表会なども開催しています。
脱炭素は、多くの企業が協力しながら進めていく必要がありますので、こういった企業同士が学び合える場は今後ますます求められると思っています。あわせて、全国のリコージャパン事業所のなかで現在18カ所あるZEB(ゼロエネルギービル)をご見学いただくのも、具体的な実践現場のイメージを掴んでいただく手助けになると思います。
また、お客様の現状のCO₂排出量を可視化し、どこから削減できるかの見極めを行うなかで、例えば空調、照明、機械などの設備運用を調整することによってCO₂を削減できるポイントから着手するなど、まずはコストをかけずに運用の改善で実践できる部分を優先的に実施していくことがとても大切です。設備更新は効果が大きいですが、当然コストもかかりますので、持続性を考え段階的に進めていくことが重要です。こうした運用改善のノウハウは、リコーが自社で長年取り組んできた環境経営の経験から生まれたものです。
NR-Power Labの研究開発の成果は、リコーグループのGX事業にどのように活かされていくのでしょうか?
出口:システム開発とビジネスモデル開発を進めて来たVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)システムによる「蓄電池制御運用サービス」と「電力の地産地消見える化サービス」のふたつについて、ポイントをお話ししますと、まず脱炭素経営の実現には、再生可能エネルギーを最大限活用することが必須です。エネルギー使用量を減らすことから始まり、再エネを創り、再エネを選び、さらに長期的に見れば、融通しあうというところまで視野に入れていく必要があります。
天候や時間帯により発電量が安定しない再エネを最大限活用するためには、データを活用した蓄電池の最適な制御、また複数の蓄電池をリソースとして束ねる調整力がカギとなるため、そこにNR-Power Labの研究開発の成果であるVPPシステムや電力の見える化の仕組みが活きてきます。
蓄電池が普及しきっていない理由のひとつには、導入コストによるところも大きく、また導入された蓄電池がBCP対策における非常用電源として設置されているだけ等、用途が限定的になってしまっているケースがあります。その蓄電池を適切に監視・充放電制御することにより用途を拡げて最大限活用できれば、投資回収期間を短くすることも可能となり、蓄電池の普及が進むと考えます。その増えた蓄電池を統合制御することにより、再エネをさらに効率よく運用することが可能となるため、蓄電池を最大限活用することは、社会に脱炭素が波及していくうえでとても重要なポイントです。
また、電力のトレーサビリティー技術についても、再エネの出所・活用先をきちんと証明したいというニーズは顕在化しつつありますので、再エネ電力の地産地消の観点などからも、電力の見える化はこれから益々必要とされるでしょう。見える化を自治体の教育コンテンツとして活用いただく等のNR-Power Labのユニークな取組みは、再エネの地産地消の一助となると思います。それに加えて、脱炭素経営のステップの中で、PDCAサイクルを回すというお話をしましたが、電力についての詳細なデータの活用で、脱炭素のロードマップや施策の精度と質をどんどん高める効果が期待できます。