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次世代に解を挑戦のプロット

PROJECT REPORTS 002

開発と実装の時間軸を近づけ、
脱炭素にスピード感を。(2/3)

全国16社の地域新電力会社と連携し、電力の地産地消と域内経済循環の促進に向け共創を開始

NR-Power Lab株式会社 代表取締役社長 中西 祐一 / 一般社団法人ローカルグッド創成支援機構 代表理事 大滝 精一

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ローカルグッド創成支援機構は、今回アドバイザーとして参画されますが、まず設立の経緯から教えてください。

一般社団法人ローカルグッド創成支援機構 代表理事 大滝 精一(以下、ローカルグッド 大滝):設立の背景は2011年の東日本大震災です。私たちは震災経験を通じて、地域コミュニティの大切さと地方の持つ明るさや強さを目の当たりにしました。こうした経験を踏まえ、「地方を良くする」つまり「ローカルをグッドにする」という大きな目標のもと、「人に魅力ある強い仕事を地方につくる」ため、2014年9月に創立されました。

 当機構は、大企業や国に依存せず民間ベースでの運営を基本としており、大きな意味での公民連携(PPP)のあるべき姿を目指しています。私たちが考える地域の活性化とは、地方が環境的・社会的・経済的に自立し主体性を持つことです。しかし、この自立に必要となる要素がしばしば不足するケースがあります。例えば人材や経験の不足、あるいは市場に対して固定費が大きくなり過ぎるといったことです。

 そこで私たちは、業務システム等を会員間で共有し競争力を高める「Share」、相互にノウハウを共有していく「Open」、連携して自立する「DIT(Do It Together)」をコンセプトとしたプログラムを提供しています。地域が主体となる事業を支援することで、「ローカルをグッドにする」ため、会員一丸となって尽力しています。

 当機構の活動対象は地域にとって良いことであれば全てですが、現在は特に地域新電力の運営支援を柱として行っています。現在26の地域新電力に加盟いただいており、日本最大の地域新電力団体となっています。

全国の地域新電力会社を多数支援してきた立場から見た、地域新電力の現状と課題を教えてください。

ローカルグッド大滝:地域新電力とは、地域の再エネ電力などを調達して地域に供給する「エネルギーの地産地消」を実現する会社です。事業利益を地域課題解決や地域共生型の再エネ開発に再投資するなどの取り組みをしており、地域経済循環や地域脱炭素化につながるとして期待され、自治体が出資等で関与するものだけでも100社近くが設立されています。

 地域新電力が拡大する背景として、国の2050年カーボンニュートラル宣言を受けた自治体の脱炭素の盛り上がりがあります。2050年までにゼロカーボンシティとなることを表明した自治体は2023年9月末時点で991に上ります。地域脱炭素の手段として、地域新電力に注目が集まっているのです。

 一方で課題もあります。地域新電力は、規模が小さくなりがちで資金も潤沢でない場合が多く、また専門人材・ノウハウがなく、業務の多くを地域外企業に丸投げしてしまっているところも少なくありません。自治体が関与する地域新電力の約半分は従業員がゼロで、地域外企業に業務を委託しているというデータもあります。これでは、地域にノウハウが留まらず、委託費などで地域外にお金が流出したままです。

 そこで当機構では、地域新電力事業のキモとなる需給管理などの専門業務を未経験の地元の方でも実施できるようになるため、諸々のトレーニングや講座等を提供しています。各地で独自に、専門知識や経験によって新たな価値を生み出す知的労働の場を創出し、ノウハウを蓄積・内製化することで、それまで地域から流出してきた資金を域内に留め、次なる投資につなげることが可能となります。加えて、高額になりがちな業務システムや専門弁護士等を会員間でシェアすることで競争力を強化する支援もしています。

 また、近年の化石燃料価格の高騰等による卸電力市場の高騰など、地域新電力を取り巻く環境は厳しくなっています。再エネ開発による電源確保や蓄電池の導入など、競争環境での生き残りをかけて新たな対応策を急ピッチで構築していかねばならない状況です。そのため、当機構では、毎月3種類の勉強会・会合を開催し、テーマに応じた情報共有を実務面も含めて実施しています。

 厳しい事業環境ですが、地域に価値をもたらす地域新電力が徐々に拡大しています。志のある地域人材により地域主体で運営されている地域新電力では、自治体の環境エネルギー政策の相談相手・パートナーとなる「ローカルシンクタンク」の役割を果たしたり、自治体連携での脱炭素事業の「地域の担い手」になりつつあります。従来、人口規模が小さい自治体には、脱炭素事業関係の担い手が少なく、地域での主体的な脱炭素事業ができませんでした。地域主体の地域新電力が地域にいることにより、地域主体での脱炭素事業が展開され、それが地域経済循環・地域発展につながってきています。

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